仕訳入力とは、企業の日々の取引を帳簿に記録する経理業務の基礎中の基礎で、正しく行うことが非常に大切です。
今回は、そんな仕訳入力・会計処理について基礎的な内容から、正しく効率的に行う方法について紹介していきます。
業務効率化、オートメーションのステップをわかりやすく紹介していきますので、ぜひ参考にしてください。
Contents
1.仕訳入力・会計処理とは
仕訳入力とは、企業の日々の取引を帳簿に記録する経理業務の基礎中の基礎です。売上や仕入れ、経費支払いなどを「勘定科目」と「金額」に分けて帳簿へ記録します。
財務諸表の土台を作り、会計処理全体の基礎となる重要な工程で、正確性と迅速性の両方が求められます。
給与計算・経費精算・請求書処理などとも密接に関係していますが、他の経理業務とは異なり、仕訳は全ての取引を複式簿記のルールに従って体系的に整理する点が特徴。
一つのミスが決算全体に影響するため、慎重な処理が必要です。
2.仕訳入力・会計処理の基本構成と記載項目
仕訳入力に必要な基本要素は「取引日付」「勘定科目」「金額」「摘要(取引内容)」の4つです。
入力先の会計ソフトによって形式は多少異なりますが、基本構成は同じです。借方と貸方の金額が必ず一致する複式簿記の原則を守りながら、適切な勘定科目を選択して記録します。
仕訳の基本構成
日付:2024年6月15日
借方:売掛金 100,000円 | 貸方:売上 100,000円
摘要:商品販売代金(○○株式会社)
よくあるミスは以下のとおり
- 勘定科目の選択ミス(例:交際費と会議費)
- 税区分の付け忘れ
- 金額の左右(借方・貸方)逆
よくあるミスとしては、勘定科目の選択を間違える(消耗品費と事務用品費の混同など)、金額の転記ミス、取引日付の誤り、借方・貸方の逆転などが挙げられます。
防止策
- 勘定科目は過去の入力履歴から確認
- 消費税区分の選択肢をテンプレで明示
- 月次締め前にチェックシートでセルフレビュー
これらを防ぐには、勘定科目を過去の入力とそろえる・一覧表を作成する、ダブルチェック体制を構築する、定期的な残高確認などが効果的です。
3.仕訳入力・会計処理の通常業務フローと課題
一般的な仕訳業務の流れは以下のとおりです。
- 請求書や領収書など証憑の収集
- 内容確認と分類
- 会計ソフトへの入力
- 月次での残高チェックと訂正
- 税理士・会計士とのやり取り
まず証憑書類(請求書、領収書、銀行通帳など)を収集・整理し、取引内容を確認します。
次に適切な勘定科目を判断し、会計ソフトまたは帳簿に仕訳を入力。最後に入力内容をチェックし、月次で残高照合を行います。
特にステップ2と3が時間と労力を要します。複雑な取引や新しいタイプの経費については、過去の処理例を調べたり、税理士に確認したりする時間が必要。
また、手書きの領収書や不鮮明なレシートの解読も時間を要します。
月末・月初は処理量が集中し、残業が発生しやすい時期。
請求書の発行や支払処理と並行して行うため、優先順位の判断も重要なスキルとなります。
入力ミスの修正や過去分の訂正仕訳も発生し、作業効率を下げる要因となっています。
4.仕訳入力・会計処理の管理・運用上の注意点
効率的な管理には、「ルールの統一」と「検索性の確保」が鍵です。
- 証憑の命名ルールを統一:「2025_06_交通費_田中.pdf」など
- 摘要欄に業務内容を記載:「クライアントAとの打ち合わせ交通費」など
- クラウド管理+OCR対応アプリで一元化
仕訳関連書類の管理フロー
①証憑スキャン→②クラウド保存→③会計ソフト連携→④仕訳確認
仕訳データの管理では、証憑書類との対応関係を明確にし、後から検索しやすい仕組みを作ることが重要です。
摘要欄には取引先名や案件名を統一フォーマットで記載し、連番管理や日付順での整理を徹底します。
勘定科目の使い分けルールを文書化し、判断に迷う取引については事例集を作成。新入社員でも一定レベルの処理ができるよう、属人化を避ける工夫が必要です。
また、定期的なバックアップとアクセス権限の管理により、データの安全性を確保します。
月次決算の精度向上のため、仮計上や見積計上のルールも明文化。期末には監査法人や税理士による確認作業があるため、根拠資料の整備と説明資料の準備も欠かせません。
5.どこがAIに?“全部やる”から“うまく分ける”へ
ここからは、仕訳入力、会計処理のどの部分をAIに置き換えられて効率化できるかという点について紹介していきます。
AIで自動化できる部分
- クレジット明細や銀行入出金の仕訳自動生成
- レシート読み取り(OCR)から、勘定科目の自動提案
- 定型的な摘要の自動入力
仕訳入力・会計処理において、AI・自動化が最も力を発揮するのは「定型的な判断を伴う作業」です。
具体的には、OCR技術による証憑読み取り、勘定科目の自動判定、銀行データからの自動仕訳生成などが置き換え可能な領域となります。
特に、毎月発生する家賃や光熱費、定期的な取引先との売買については、AIが過去のパターンを学習し、ほぼ100%の精度で自動処理できます。
また、単純な計算ミスや借貸バランスの確認も、システムが瞬時にチェック可能です。
人が担うべき部分
- 例外処理(例:雑収入か返金か判断に迷うケース)
- 勘定科目の最終確認
- 決算や監査対応のためのコメント
一方で、人が担うべき重要な部分は「判断を要する複雑な取引の処理」「イレギュラーな案件への対応」「経営陣への説明・提案」です。
新しいビジネスモデルの会計処理、税制改正への対応、内部統制の構築といった戦略的な業務こそ、経験と知識を持つ事務職員の真価が問われる領域。
AIはあくまでツールとして活用し、人間の専門性を高める方向で役割分担を考えることが重要です。
AIの活用で「入力作業」は大幅に減らせますが、「判断業務」は人にしかできません。そのため、「AIの補助を受けつつ、正しく判断できるスキル」が今後の事務職には求められます。
6.仕訳入力・会計処理の業務効率化とオートメーションの具体策
Before/After改善例
作業項目 | Before(手作業) | After(AI活用) | 時間短縮率 |
レシート入力 | 手入力(1枚あたり3分) | OCR+自動仕訳(10秒) | 約94%短縮 |
クレカ明細処理 | Excel転記(30分) | API連携で自動仕訳(2分) | 約93%短縮 |
科目選定 | 都度マニュアル確認 | AIが過去データから推定 | 約80%短縮 |
使えるツール例
- freee/マネーフォワード:OCR・銀行連携あり
- STREAMED(ストリームド):紙証憑も自動仕訳
- Google Apps Script:会計ソフト連携や通知自動化に活用可
効果的なツールとしては、freee・マネーフォワード・弥生などのクラウド会計ソフトが代表的。これらは銀行API連携、OCR機能、AI仕訳提案機能を標準搭載しており、導入コストも月額数千円から利用可能です。
定量効果(一例)
月間の仕訳件数:100件程度の中小企業では、従来20時間かかっていた作業が5時間程度に短縮され、年間で約180時間(約23営業日分)の工数削減を実現。人件費換算で年間約50万円のコスト削減効果が期待できます。精度面でも、手作業時の入力ミス率5%から1%以下への改善が一般的です。
7.仕訳入力・会計処理効率化の導入ステップ
ここでは、AIや自動化ツールを導入する具体的な流れを解説します。
全体としては「準備→小規模導入→全体運用」の3段階で構成されます。
Step1:現状把握とルール整備(1-2週間)
まず現在の仕訳パターンを洗い出し、頻出する取引の勘定科目ルールを整理します。過去3ヶ月分の仕訳データを分析し、定型取引(全体の70-80%)とイレギュラー取引を分類。取引先ごと、費用項目ごとの勘定科目対応表を作成し、判断基準を明文化します。
実践ポイント: ExcelやGoogleスプレッドシートで「取引内容」「勘定科目」「判断理由」の3列からなる一覧表を作成。社内の他部署でも参照できる共有フォルダに保存し、随時更新できる体制を整えます。
Step2:会計ソフト選定と初期設定(2-3週間)
事業規模と予算に応じて適切なクラウド会計ソフトを選定。無料トライアルを活用し、実際の取引データで操作性を確認します。選定後は勘定科目の設定、銀行口座連携、税率設定などの初期セットアップを実施。
実践ポイント: 既存の勘定科目体系を活かしつつ、ソフトのAI機能が正しく動作するよう標準的な科目名に統一。補助科目も整理し、管理したい切り口(部門別、取引先別など)を明確にします。
Step3:OCR・自動仕訳機能の設定(1週間)
証憑のOCR読み取り精度向上のため、スキャン方法を標準化。レシートは折り曲げを伸ばし、影が入らないよう撮影する手順を作成します。頻出取引先の自動仕訳ルールを設定し、学習データを蓄積。
実践ポイント: 最初の1ヶ月は自動提案された仕訳を必ず人がチェックし、間違いがあれば修正してAIの学習精度を向上させます。正解データが蓄積されるほど、提案精度が向上します。
Step4:部分導入とテスト運用(1ヶ月)
まず定型取引(家賃、光熱費、給与など)から自動化を開始。従来の手作業と並行して処理し、結果を比較検証します。問題がなければ対象範囲を段階的に拡大。
実践ポイント: 月初1週間は新システムと従来手法の両方で処理し、結果の整合性を確認。差異が発生した場合は原因を特定し、設定を調整します。
Step5:全面導入と運用改善(2-3ヶ月)
全ての仕訳業務を新システムに移行し、継続的な改善活動を実施。月次で処理時間とミス発生状況を測定し、さらなる効率化ポイントを特定します。四半期ごとに勘定科目ルールの見直しを行い、新しい取引パターンに対応。
実践ポイント: 導入効果測定のため、「処理時間」「ミス件数」「残業時間」の3指標を毎月記録。経営陣への報告資料として活用し、さらなる投資やシステム拡張の根拠とします。
継続的改善のポイント
導入完了後も定期的な見直しが重要です。新しい取引が発生した際は勘定科目ルールを更新し、AI学習データに反映。税制改正や会計基準変更にも適切に対応し、常に最新の基準で処理できる体制を維持します。
また、他部署からの協力も不可欠。営業部門には統一フォーマットでの請求書発行を依頼し、購買部門には支払承認プロセスの電子化を提案するなど、全社的な効率化につなげていくことで、真の価値創出が実現できます。
改善のための成果モニタリング例
業務改善KPI→①月次業務時間/②入力ミス件数/③月次締め遅延日数
指標 | 導入前(4月) | 導入後1ヶ月(5月) | 導入後3ヶ月(7月) | 改善率 |
月次業務時間(h) | 40時間 | 28時間 | 22時間 | ▲45% |
入力ミス件数(件) | 12件 | 5件 | 2件 | ▲83% |
月次締め遅延日数(日) | 3日 | 1日 | 0日 | ▲100% |
まとめ
この記事を読んだあなたが、少しでも「これならできそう」と感じたなら、まずは自分の担当領域の「繰り返し作業」から見直してみましょう。
AIと事務職が良いパートナーになれる未来は、すぐそこまで来ています。
ミスなく効率的に事務業務を行うためにも、ぜひAI化を進めていってくださいね!
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