請求書は、利益を確実に回収するために非常に重要です。
ただ取引が多いと、請求書業務も多くなってしまい、労力がかかってしまったり、ミスが多くなってしまうこともあるでしょう。
今回は、そんな請求書作成業務について、基本的な内容から、AI・デジタル化で正しく早くできる方法を紹介していきます。
実務ベースで紹介していきますので、ぜひ参考にしてください。
Contents
1.請求書の作成と管理とは
請求書の作成と管理は、企業の収益を確実に回収するための重要な業務です。
見積書・納品書・領収書と並んで、取引の根幹をなす存在です。
単なる「お金を請求する書類」ではなく、企業の信頼性を示すビジネス文書として、正確性と迅速性が求められます。
請求書の特徴
- 金銭の請求が発生する法的効力を持つ
- 支払期限・振込先など、正確さが求められる
- ミスが取引先との信頼損失に直結する
他書類との違いと役割
書類名 | 目的 | タイミング | 重要度 |
見積書 | 価格提示・提案 | 契約前 | 営業活動 |
納品書 | 商品・サービス提供の証明 | 提供時 | 履行確認 |
請求書 | 代金請求・回収 | 提供後 | 収益確保 |
領収書 | 支払い受領の証明 | 入金後 | 取引完了 |
見積書が「提案書」、納品書が「納品証明書」とするなら、請求書は「お会計」。
請求書は、取引の締めくくりとして重要な書類で、処理漏れや記載ミスがあると、金銭トラブルに直結する恐れがあります。
また、請求業務は企業のキャッシュフローに直結するため、遅延や誤りは経営に深刻な影響を与えます。
特に中小企業では、請求漏れや回収遅延が資金繰りを圧迫する原因となることも少なくありません。
2.請求書の基本構成と記載項目
請求書には、インボイス制度(適格請求書等保存方式)に対応する場合、一定の法的記載要件が定められています。
請求書の形式(デザインやレイアウト)に関しては自由ですが、記載すべき中身は法律で明確に定義されています。
法定記載項目(消費税法 第57条の4より)
- 事業者の氏名または名称と登録番号
- 取引年月日
- 取引内容(品目やサービス内容、軽減税率の有無)
- 税率ごとに区分した対価の額(税抜または税込が明示されていればOK)
- 適用税率とそれに対応する消費税額
- 書類の交付を受ける相手方の氏名または名称
これらをすべて満たしていない請求書は、相手が仕入税額控除を受けられないことになってしまいます。
3.請求書の様式にルールはない
請求書のフォーマット(様式)は法律で決められていないため、企業ごとに自由にカスタマイズ可能です。
「わかりやすさ」がすべて。重要なのは、「必要な情報が、誰にとってもすぐに確認できるようになっているか」という視認性と構成です。
レイアウト構成の例
出典:https://www.freee.co.jp/kb/template/invoice/template-4/
このように、「誰が見ても、どこに何が書かれているかがすぐわかる」ということが、実務上の最重要ポイントです。
装飾よりも「整っている」「整列している」方が圧倒的に信頼されます。
よくあるミスとその防止策
ミスの例 | 主な原因 | 防止策 |
税率の誤記 | 設定ミス・手入力 | テンプレの税計算を自動化 |
支払期限の抜け/誤記 | コピペ忘れ | 初期テンプレで記入済みに |
振込先の変更漏れ | 旧データの流用 | マスタ管理と定期チェックを実施 |
ありがちな「余計な記載項目」
以下は請求書に必須ではないにもかかわらず、盛り込みがちな項目。情報を詰め込みすぎると、かえって誤解や見落としを招くことも。
- ハンコ/スタンプ画像
→本来、請求書では不要。 - 派手な背景やキャッチコピー
→見づらくなるだけ。実務には不要。 - 商品の備考欄に長い営業メッセージ
→内容が埋もれたり、誤解を招く可能性あり。 - 取引先担当者の名前や部署を必要以上に詳しく記載
→情報量が多すぎるとミスや混乱のもとに。 - 過去の請求内容や支払状況を書き添える
→今回の請求内容が見えづらくなる。 - 「二重請求にご注意ください」などの赤字強調文
→相手を責める印象を与えかねない。
これらは一見親切そうに見えますが、法的要件を満たすうえでは不要であり、かえって誤解・混乱・ミスの元になることも。
シンプルが一番。
請求書は「正確性」「視認性」「処理しやすさ」が重要です。装飾より機能性を優先し、必要最小限の情報で構成することが、結果的に支払いスピード向上につながります。
4.請求書業務の通常業務フロー
請求書作成業務は、営業事務や経理が連携しながら進めることが多く、以下のような流れになります。
一般的な請求書業務の流れ
- 案件・取引の確認(5分)
- 契約内容や納品の確認
- 請求対象の確認
- 請求書作成(15-30分)
- テンプレ入力
- 金額計算&税額計算
- 内容確認
- 承認・チェック(10分)
- 上司確認
- 金額チェック(再計算)
- 発行・送付(10分)
- PDF化・印刷
- 郵送またはメール送信
- 管理・追跡(継続的)
- 発行記録の保存
- 支払状況の確認
- 督促処理
時間のかかる工程と課題
時間のかかる工程
以下の工程が、請求書業務全体の中でも特に時間を要する作業です。
作業名 | 内容例 | 時間比率(目安) |
情報入力作業 | 顧客・商品・金額等の手入力 | 約40% |
確認・照合作業 | 受注・納品・金額の突合/ミスチェック | 約25% |
過去情報の検索 | 請求書の再発行・支払履歴確認など | 約20% |
実際の割合は担当範囲や状況により異なりますが、多くの企業でこの傾向が見られます。
主な課題とその背景
上記の時間がかかる工程には、共通して以下のような課題が隠れています。
課題 | 内容 | 背景/原因 |
入力ミスが多発しやすい | 顧客名や金額の誤記など | データの二重入力・複数資料からの転記作業 |
チェックに時間がかかる | 計算ミスや整合性確認が手作業 | 統一されたテンプレや検算システムが未整備 |
検索に時間がかかる | 過去の請求書や支払い履歴を探すのに時間がかかる | 請求書の保管ルールが曖昧/台帳と紐づいていない |
修正対応が頻発する | 差し戻しや再発行が多く、手戻りにつながる | 承認前の確認工程が不十分、顧客との行き違い |
結局のところ時間を食っているのは、「入力・確認・検索」の3つの業務。そこに隠れた課題を見逃さないことが、業務改善の第一歩です。
5.請求書の管理・運用上の注意点
請求書は、発行後の保管と管理も重要な業務の一部。特に中小企業では「探せない」「見つからない」トラブルが多発します。
管理の工夫
- 番号管理:通し番号で一元管理(INV-2025-0001 など)
- 台帳の活用:ExcelやGoogleスプレッドシートで一覧化
- フォルダ命名ルール:例「2025_05_請求書_○○社」
台帳の項目設計
- 請求書番号
- 発行日
- 顧客名
- 請求金額
- 支払期日
- 入金日
- 状況(未収・入金済・督促中)
検索性を高める工夫
- デジタル化の徹底
紙の請求書を廃止し、すべてをPDF化・クラウドに保管して情報の分散を防ぐ - タグ付け管理
顧客名や商品カテゴリごとにタグを設定し、検索・抽出作業をスムーズに行えるようにする - クラウド保存
社内外からリアルタイムで請求書にアクセスできる環境を整え、共有・確認の効率を高める - バックアップ体制
誤削除やシステム障害が起きても復旧できるよう、自動バックアップと履歴保存機能を備える
電子帳簿保存法への対応
電子請求書の保存は「改ざん防止」と「検索性確保」が求められます。ツールを使えば対応可能ですが、導入前の設計がカギになります。
6.どこがAIに?“全部やる”から“うまく分ける”へ。
請求書業務を全自動に…と思いがちですが、「全部AIに任せる」のではなく「分けて活かす」ことがいまのところ現実的です。
AIが得意なこと
- 金額・消費税などの自動計算
- 受注・納品データとの照合
- 請求書作成とPDF生成
- 発行台帳の自動記録
- 定型文付きのメール送信
人が担うべき業務
- 例外対応・判断業務:複雑な条件や例外対応、個別交渉への判断対応
- 関係構築:重要顧客への対応や信頼関係の構築
- 戦略的な判断:条件見直しやリスクを踏まえた改善提案と判断
繰り返し処理や計算はAIに任せ、例外対応や関係構築、判断が必要な場面では人の強みを活かすことで、業務全体の質と効率を両立できます。
7.業務効率化とオートメーションの具体策
ここからは、請求書業務の効率化とオートメーションの具体策について紹介していきます。
Before/Afterで比較をしていますので、ぜひ参考にしてください。
Before/After比較(導入前と後)
項目 | 導入前 | 導入後 |
作業時間 | 1通あたり15〜20分 | 5分未満で自動生成可能 |
作成ミス | 月3〜5件の記載ミス | 自動計算によりほぼゼロ |
発行漏れ | 台帳転記漏れで未発行リスクあり | 自動台帳反映で発行漏れ防止 |
使えるツールとその効果
- 請求書自動作成ツール
- ツール例: Misoca、freee請求書、マネーフォワード請求書
- 導入コスト: 月額500-2,000円
- 時間削減効果: 1件あたり25分短縮
- 年間コスト削減: 約50万円(人件費換算)
- OCR・AI入力支援
- ツール例: Google Cloud Vision API、Adobe Acrobat DC
- 精度: 95%以上の文字認識率
- 処理速度: 1秒/枚(従来30秒)
- RPA(業務自動化)
- ツール例: UiPath、WinActor、Power Automate
- 自動化範囲: データ転記から発送まで一連の流れ
- 稼働時間: 24時間365日対応可能
ツール名 | 主な機能 | 効果(定量) |
freee請求書 | クラウドでの請求書作成・送付 | 工数50〜70%削減 |
misoca | テンプレ式作成/自動送付 | 精度98%以上、送付忘れゼロ |
ChatGPT+GAS連携 | 請求データ→PDF自動生成+台帳登録 | 月20時間以上削減も可能 |
年間の業務改善例
コスト削減効果
- 人件費削減:約60万円
- 印刷・郵送費削減:約12万円
- システム導入費:△24万円
- 純削減効果:約48万円
品質向上効果
- エラー率:5% → 0.5%
- 顧客満足度:15%向上
- 支払サイクル:3日短縮
8.導入ステップ|読んだまま真似できる、AI導入の手順
いきなり全部ではなく「小さく始めて広げる」のが成功のコツ。以下のステップで始めましょう。
Phase 1: 現状分析と準備(1-2週間)
Step 1-1: 現状把握
- 月間請求書発行件数を集計
- 1件あたりの作業時間を測定(3日間)
- よくあるエラーパターンを記録
- 使用している様式・フォーマットを整理
Step 1-2: 顧客マスタの整備
- 必要項目:
- – 顧客コード(独自設定)
- – 正式会社名
- – 請求書宛名
- – 郵便番号・住所
- – 担当者名・部署
- – 支払条件(月末締翌月末払い等)
– 振込手数料負担(先方/当方)
Phase 2: テンプレート化と標準化(1週間)
Step 2-1: 請求書テンプレート作成
- Excel/Googleスプレッドシートで基本フォーマット作成
- 計算式を全て関数化(手入力禁止)
- 入力規則を設定(日付形式、数値形式等)
- プルダウンメニューで選択可能な項目を設定
Step 2-2: 番号採番ルール確立
- 請求書番号形式例:
- INV-YYYY-MM-999
- (INV-2024-03-001)
- 管理方法:
- – 月初に連番をリセット
- – Excelの自動採番機能活用
– 欠番管理の仕組み構築
Phase 3: 部分的自動化導入(2-3週間)
Step 3-1: 簡易自動化の実装
- Excel VBAによる自動化
- 顧客マスタからの自動入力機能
- PDF自動生成マクロ
- 一括メール送信機能
- Googleフォーム活用
- 営業部門からの請求依頼受付
- 自動でスプレッドシートに転記
Step 3-2: 無料ツールでの試行
- Gmail + Google Driveでの管理体制構築
- Googleカレンダーでの支払期日管理
- Google Apps Scriptでの簡易自動化
Phase 4: 本格的システム導入(1ヶ月)
Step 4-1: ツール選定 評価基準:
- 月間処理件数への対応可能性
- 既存システムとの連携性
- サポート体制の充実度
- 導入・運用コスト
推奨導入順序:
- freee請求書(月額1,980円〜)
- 簡単導入、直感的操作
- 会計ソフトとの連携
- Misoca(月額800円〜)
- 請求書特化、高機能
- 郵送代行サービスあり
Step 4-2: データ移行
- 既存データのCSV出力
- 新システムへのインポート
- データ整合性チェック
- 過去データとの突合確認
Phase 5: 運用定着とレベルアップ(継続)
Step 5-1: 運用ルール整備
- 運用マニュアル作成項目:
- 日次チェック項目
- 週次・月次処理手順
- エラー発生時の対応フロー
- 顧客からの問い合わせ対応
システム障害時のバックアップ手順
Step 5-2: 効果測定と改善 毎月の振り返り項目:
- 処理時間の記録・分析
- エラー件数・原因分析
- 顧客からのフィードバック収集
- システム利用率の確認
Step 5-3: 高度化への展開
- AI-OCRツールの追加導入
- RPAツールでの完全自動化
- BIツールでの分析高度化
- API連携による他システム統合
導入成功のポイント
- スモールスタート:一部業務から始めて段階的に拡大
- 関係者の巻き込み:営業・経理部門との連携体制構築
- 継続的改善:月1回の振り返りと改善サイクル
- バックアップ体制:システム障害時の代替手段確保
この導入ステップに沿って進めることで、3ヶ月以内に請求書業務の大幅な効率化が実現できます!
重要なのは、完璧を求めずに「まず始めること」。小さな改善の積み重ねが、大きな変化を生み出します。
まとめ 請求書業務のAI化は、“信頼”と“効率”を両立する第一歩。
今回は、請求書業務について紹介しました。
まずは一工程でも自動化してみることから、事務の可能性が広がっていきます。
「ただの作業」だった請求書づくりが、あなたの強みを活かす業務に変わるかもしれません。
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